次元を越えた出会い




  教団の廊下を歩いていたら、歌が聞こえてきた。

  誘われるように・・・、吸い込まれるように・・・、歌が聞こえてくる方に足が勝手に動いた。

  気づいたら、いつの間にか教団の森に来ていた。

  「あれ?いつの間に外に出たんだろう?」

  キョロキョロと周りを見渡していると、肩に留まっていたティムキャンピーの試作品であるリムが、
  電光石火の勢いで一直線に飛んで行ってしまった。

  「あ〜っ、リム〜どこ行くの!?待ってぇ〜〜〜」

  慌ててリムを追いかけた。





 次元を越えた出会い





  は教団の森で、木陰に座り歌っていた。

  ・・・が、何かが近づいてくる気配を感じ、歌を止めた。

  「ん?」

  気配の方に振り向くと・・・・・。

  ―――ズゴンッ!!

  「ぐあッ!?」

  もの凄い勢いで飛んできた何かが、の額に激突した。

  「痛っ!マジで痛っ!!頭蓋骨陥没・・・!むしろ頭突き抜けるかと・・・っ」

  パタパタという羽音に、は陥没しかけた額を擦りながら顔を上げる。
 
  そこには見慣れたゴーレムの姿があった。

  「ティムキャンピー!?」





  師匠であるクロス=マリアンのゴーレムがココに居ることに驚く。

  「どうしてココに!?まさかクロスが教団に?・・・イヤイヤありえない。
   ―――ってことはアレンが?」

  問いかけに、ゴーレムはタダ嬉しそうに周りを飛び回っているだけだった。

  その時。

  「リム!」

  可愛らしい声がした。
  見れば、リナリーと同じ団服を着た、声同様に可愛い少女がそこに居た。

  (うわー、かわいい娘だなあ〜)

  あまりの可愛さに思わず感心すらしてしまうに、少女が恐る恐る声をかける。

  「あの・・・、リムがごめんなさい・・・・・」

  「へ?リム?」

  少女がゴーレムを<リム>と呼ぶので、よくよく見れば、似ているがティムキャンピーではなかった。

  「このコ、あなたのゴーレム?」

  「はい!・・・それで、ごめんなさい・・・・・」

  「え?ごめんなさいって・・・何が?」

  「その、額・・・」

  「ああコレね・・・」

  の額には、リムがぶつかってきた時に出来たとしか思えないクッキリとした丸い痕が残っている。
  そこまで言われてはようやく、この可愛い少女が何を自分に謝っているのか理解した。

  「いいよ。・・・まだちょっと、頭の中がぐぁんぐぁん言ってるけど・・・・・

  「ほんとにごめんなさい!」

  自分に頭を下げる少女が、本当に可愛らしかった。

  「私は。あなた名前は?」

  「私は卯月未歩、よろしくね」

  自己紹介をして見詰め合い、互いに思った。

  (あれ?なんだろう、この娘、他の人と雰囲気って言うか・・・波長のようなものが違う・・・・・)

  (あれ?こんな人、Dグレにいたっけ・・・?)

  不思議に思い合いながらもふたりは笑顔で話を続け、一緒にお茶をすることになった。





  食堂に向かう途中、ふたりはラビに会った。

  「〜〜〜v」

  「あ、ラビ」

  「ほんとだ、ラビだ」

  「ラビとは知り合い?」

  「うん」

  「うわ〜、がメチャクチャかわいい娘といるさ〜v」

  ラビの台詞に、と未歩は互いに顔を見合い目を瞬かせる。

  「ラビと知り合いじゃなかったの?」

  「知り合いだよ!」

  未歩は慌てたようにラビに言う。

  「ラビ!冗談は止めてよ!」

  「いや、ジョーダンなんて言ってないさ。
   オレ、キミみたいなかわいい娘と会ったのは、はじめてだって」
 
  「そ・・・そんな、ウソ・・・・・」

  今にも泣きそうな未歩に、はラビに向かって怒りの声を上げた。

  「ラビ!!」

  「いやだってさ・・・。こんなかわいい娘、オレ忘れるワケないし・・・」

  「問答無用っ!天誅!!」

  長い髪と団服の裾をなびかせ、の華麗な回し蹴りがラビにヒット。
  そのままラビは床へと崩れ、動かなくなった。

  いきなりラビがぶっとばされる光景に、未歩の目に溜まった涙はどこかへ消えていた。

  「ラビ、だ、大丈夫・・・?」

  「こんなのに優しい言葉なんてかけなくていいよ。
   ―――それより、行こう!」

  「う、うん」





  「あっ、神田!」

  さらに途中で神田を発見。
  先程のラビのことを気にしていた未歩は、神田の元に駆け寄り話しかけた。

  「神田!神田は私のこと知ってるよね!?」

  「はあ!?・・・だ、誰だよ、お前・・・・・」

  突然のことに動揺しているような神田だが、ウソをついているようではない。

  「う〜〜、そんな〜神田までぇ〜〜〜」

  「こんなかわいい娘を忘れるなんて・・・」

  冷たい視線をは神田に向ける。

  「そ、そんなこと言ったってな!ほんとに知らなねェ・・・」

  「もういい!ユウさよなら〜〜〜!

  は神田から六幻を奪うと、遠くへと放り投げた。

  「!お前なんてこと・・・っ、六幻ーーーーー!!!!

  恋人・・・ならぬ相棒を名を叫び、神田は必死に六幻を追いかけて行った。

  「さてと、未歩。どう思う?」

  「え?」

  「あなたはラビとユウを知っている。でもふたりはあなたを知らない。
   ―――これって、おかしいよね?」

  「どうなってるんだろう・・・」

  「もしかして未歩の居た世界と、ココの世界って違うんじゃない?」

  「それって・・・」

  「世界は一つとは限らない。次元にはいくつもの世界がある。
   未歩は同じ世界観の平行世界から、ココに来たんだよ。どちらも現実で、どちらの人物も本物。
   だからあっちでラビとユウに知り合ってても、こっちでのふたりは知らないんだ」

  「なるほど!」

  ぽんっと未歩はの説明に手を合わせて納得した。

  「でもよくわかったね?
   私は元々別の世界からDグレの世界に来たから、その話が妙に納得するけど」

  Dグレ?とは首を傾げそうになった。
  未歩の言葉の中に聞かない単語があったのだが、そこはあえてツッコまないでも続ける。

  「いや、実を言うと私も、違うけど同じ・・・ような気が・・・・・」

  ―――いったいどっちだ。

  「そうなの!?」

  どうやら未歩の中では同じになったらしい。

  「うん。あ、これヒミツね」

  「うん!―――・・・でも、私、元いたDグレの世界に帰れるのかなぁ?」

  「こっちに来る前に何か起きなかった?」

  だからDグレって?などと思いながらも、はなんだか聞いてはいけないような気がしたので、
  それは無視する。

  「う〜ん?特に何も」

  「コムイに変な薬飲まされたとか」

  「飲んでないと思う」

  「コムイが変な実験爆発起こしたとか」

  「何も起きなかったよ」

  「コムイが変なイノセンスをよこしたとか」

  「貰ってない」

  「じゃあコムイが・・・――」

  「全部コムイさんなんだね・・・」

  「原因がコムイしか思いつかなくて・・・・・」

  ふたりは深い溜息を吐いた。

  そう言えば、と未歩は思い出す。

  「歌が聞こえたっ!そしたら、教団の廊下歩いてたハズなのに、いつの間にか森にいたの!」

  ピシッ――、とは固まった。

  「う、歌?歌ってまさか・・・私の・・・・・」

  ―――原因は、わたし・・・?

  「ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!!!!」

  「!?」


  は謝り叫びながら走り去って行った。

  「待って!別世界で私をひとりにしないでぇーーー!!」
 
  未歩の叫びには急停止。
  方向転換して走り戻ってきた。

  「ごめんなさい・・・。もうイロイロとごめんなさい・・・・・」

  「いいよ!気にしないで、ね!」

  未歩に慰められるだった。

  「えーと、それでつまり、私の歌が未歩をこっちに呼び寄せたと・・・。
   ―――ならものは試しで、もう一度教団の森で歌ってみよう。何か起きるかも」

  「そうだね」

  ふたりの話がつくたところで、ラビと神田がやって来た。

  「酷いさ〜」

  「ったく、なんてことしやがる」

  「あははは・・・、ちょっとした誤解がありまして・・・。ごめんね、ふたりとも」

  「んでも、オレやっぱりこのかわいい娘、覚えがないんよ」

  ラビの視線が未歩に向かう。

  「えーと、それは・・・きゃあ!

  「「ラビ!!」」

  どう説明しようかと悩む未歩にラビが抱きついた。
  と神田の諌める声が上げる。

  「スキンシップ!スキンシップ!こーんなにかわいいんだから、きっと感覚が覚えて・・・」

  ―――イノセンス発動!!


  「度が過ぎたスキンシップはセクハラだって、いっつも言ってるよね?
   ねえラビ、聞いてる?トドメさすよ?」


  は発動したイノセンスを手に持ちながら、血で染まった床に沈むラビに問いかける。

  「もう、聞こえてないと思う・・・」

  「すでに事切れてるぞ」

  その一瞬とも言える出来事に未歩は青ざめ、見事だ――と神田は呟いていた。





  ラビは神田に任せ、未歩とは教団の森へと戻った。

  「それじゃあ・・・、歌うね・・・?」

  「う、うん!」

  は歌い始める。

  最初のうちは緊張して聞いていた未歩だが、次第に眠くなり・・・眠ってしまったのだった。





  * * * *





  「・・・未歩、未歩!」

  揺らされ呼ばれる声に、未歩はハっと起きる。

  「未歩〜、こんな所で寝ちゃダメさ〜」

  「お前、廊下で寝るなよ・・・」

  目の前にいるのはラビに神田。
 
  「ふ、ふたりとも!私のこと知ってるの!?」

  「はあ?何言ってるんだ?」

  「オレたちが未歩のこと知らないワケないって!」

  呆れた様子の神田に、笑うラビ。

  「なんか夢でも見てたんじゃないんか?」

  「夢・・・・・」

  ラビに言われ、未歩は考える。

  ―――あれは本当に夢だったのかな?

 



  * * * *





  数日後。

  神田とラビと会話をしていた未歩に、どこからか聞いたことのある歌が聞こえてきた。

  「え!?この歌は・・・!」

  確かめるべく、歌のする方へと走り出す。

  そして辿り着いたのは教団の森―――。

  そこにはの姿があった。

  「!」

  「未歩!?なんでココに?またこっちに来たの!?」

  やっぱりあれは夢では無かったんだと、未歩は確信した。

  「の歌が聞こえてきたから、思わず走って来ちゃって・・・。
   どうしよう〜、また別世界に来ちゃったぁ〜」

  「大丈夫、もう一度同じことすれば・・・」

  が言いかけた時、未歩のあとから神田とラビが現れた。

  「卯月、急に走り出してどうしたんだよ?」

  「あれ?未歩、その娘ダレさ?」

  ―――・・・・・・まさか。

  「今度は私かーーーーーーッ!?」


  の叫びが森に響いた。









  END




  あとがき:『夢と異界の扉』の管理人・樹です。
       今回、初コラボ夢。羅那様の主人公ちゃんとウチの主人公を共演させてもらいました。
       コラボ夢って難しいですね。身に染みました。
       羅那様の主人公ちゃんは、樹の中ではとにかくカワイイ娘です。
       こんなふうになってしましましたけど、主人公ちゃんのイメージが違くなっていたらごめんなさい!
       羅那様、こんなんでも宜しかったら貰ってやってください。