微笑みと一緒に







 年に一度のビッグイベントでは


 普段起きないことを 起こしてみないと思いませんか?














微笑みと一緒に
















 不気味なオーラを醸し出す黒の教団総本部でも、


 クリスマスという日にはとても綺麗に飾りつけされている。


 談話室に行けば探索部隊や科学班の方々が騒ぎ合い


 食堂へ行けばジェリーお手製の可愛らしいケーキ。


 皆機嫌良しで笑顔を多く見られるこの日、一人笑顔無の人物がいた。













 「・・・・・・・・。」











 ・・・いつもと変わらない様子のようだが。


 いつにも増して眉間に皺の寄るエクソシスト・神田ユウ。


 怒っているというよりも、苦悩していると言ったほうが正しい。












 「ちっ・・・・どいつもこいつも何だってあんな笑ってるんだ。」











 悪態をつきながら長い廊下を歩いていく。


 すると、曲がり角から陽気な声と共に人影が飛び出てきた。











 「お!ユウじゃん!」


 「・・・ラビか。」


 「またそんな眉間に皺寄せてー。何してるんさ、は?」


 「司令室だよ。」











 ラビはケーキでも食べてきたのだろうか、口の周りに食べカスがついている。


 ふと、神田は何かに気付いた。













 「おい。」


 「ん?」


 「ちょっと笑ってみろ。」


 「へ?・・・こう?」












 ニッコーニコニコニコニコ・・・・・という効果音と


 周りに花が咲いてそうなくらいに笑顔のラビ。


 そんなラビを見て神田はため息をついた。











 「あ!ユウが笑えって言ったのにー!」


 「もう一回笑ってみろ」


 「ヘイ。」




 へら〜・・・・




 「・・何でお前はそうアホっぽく笑えるんだ。」


 「失礼な!さっきから笑えっつったりアホっつたり!」











 きぃ!と涙目になりながらラビは抗議を始める。











 「なーんか様子が変さ。何、ユウ笑いたいん?」


 「・・・違ェよ。」


 「今間があったさ!ほらほら、お兄さんに話してみるさ!」


 「誰がお兄さんだ!」











 図星をつかれたように、眼を逸らす神田。


 それを見逃さなかったラビは神田の肩を軽く叩きながら、


 さあ話してみろと自分を指差す。大分渋ってるものの、口を開き始めた。













 「俺は普段笑うっつーことしねェだろ。」


 「うん。不敵な笑みはするけど。」


 「一言多い。・・・今日クリスマスとかいう日だろ。」


 「(本当のことなのに・・)ふむ、クリスマスさね。」


 「・・・・に、プレゼント渡しに行くだろ。」


 「うん。・・・・・・・・ユウ・・もしかして、」











 まるで単語のように、淡々と述べていく。


 相槌を打ちながら(途中怒られたが)聞いていくと


 勘の良いラビは神田が何を言いたいのか悟ったのか、驚いたような顔をした。











 「『愛するへ笑顔と一緒にプレゼントを渡したいなv』という魂胆さげふ!!」


 「言い方を変えろ言い方を!!誰だソイツ!!」


 「痛ー・・殴らなくてもいいじゃんさ、意味は間違ってないっしょ?」











 そう、神田は普段笑わない。それが恋人であるの前であっても


 表情は優しくなるが笑顔を出すということはないのだ。


 神田なりに気にかかっていたのだろう。だから今日だけは少しでも


 笑ってへクリスマスプレゼントを渡したい、という健気な願いだ。











 「なーるほど、ユウも大変さ。」


 「・・けどもういい。笑うなんてことできねェしな。」


 「まぁ・・・・笑顔じゃなくてもユウから渡すんだから、

  凄い嬉しいと思うけど。それに、笑顔が良くても作っちゃ駄目さ。」


 「・・・作る?」



 「そ、作っちゃ駄目。笑顔ってのは自然なのが一番なんさ。」











 そう言ってまたニーッと笑う。


 ラビのように自然に笑えるというのは凄いのだな、と神田は思った。


 作った笑顔も必要だろう。だがやはり、自然な笑顔が一番暖かい。











 「・・・もう行く。引き止めて悪かったな。」


 「おー、頑張ってな。」













 いつも通りの顔に戻り、ある場所へ向かう神田。


 向かう場所は司令室 ―・・・のいる場所。
















 * * *











 「


 「あら神田。談話室に居ていいって言ったのに。」


 「手伝う。それと早く渡しとく。」











 差し出された神田の手には、リボンがついた四角の箱。


 プレゼントだ。神田は早く受け取れ、と照れたように言った。











 「ありがとう。」


 「・・礼なんかいらねェよ。」


 「ふふ、大切にするわ。ちょっと待ってね」











 神田に背を向け、机の上に置いていた白衣を手に取る。


 その白衣のポケットの中からプレゼントと思われるものを取り出した。











 「私からのプレゼント。Merry Xmas、神田。」


 「・・・ありがとう・・とMerry Xmas。」


 「お、何だか今日は素直ね。」


 「何時もと変わんねーよ。」













 そうは言ってみるものの、どうしても頭の中にあるもの。


 先ほどまで悪戦苦闘していた"笑顔"。












 「は、」


 「何?」


 「俺に・・・笑って欲しいと思うか?」











 よく笑うと、あまり笑わない神田。


 一緒に居て、つまらなく思ったことはないだろうか。


 そんな不安が神田に過ぎる。


 問いかけられたは、きょとんとして、微笑んだ。











 「そんな哀しそうな顔しないの。」


 「けど、お前・・・」


 「神田はちゃんと笑ってるじゃない。」


 「そういう笑いじゃなくてだな・・・・俺が言いたいのは、」


 「不満なんて思ってないよ。神田は神田。そうでしょう?」











 当たり前のように、神田の胸を手の平で小突く。


 今度は神田がきょとんとするほうだ。











 「そんなに気になるなら、コムイさんに薬でも作ってもらう?」


 「いやそれはいい。逆におかしくなりそうだ。」


 「そうね、私も神田がおかしくなっちゃうのは嫌だわ。」











 けらけらと笑いながら、怪しい煙を出す薬を持ったコムイを思い浮かべる。


 張本人であるコムイが今居ないというのが幸いだ。


 ゆっくりと、神田は目を窓の外へ向けた。











 「お前は不思議だ。」


 「不思議?」


 「俺がさっきまでずっと悩んでたことを、すぐ解決できる。」


 「・・・そう?」



 「すっきりした。 ・・流石だな。」










 神田がのほうへと目を向け直すと


 が目を丸くして口をぽかんと開けている。


 何かおかしいことを言ってしまったのか、と神田は少々焦る。











 「な、何だよ。」


 「いいい今!」


 「は?」


 「今・・・・神田、微笑んでた。」












 無意識のうちに、微笑んでいた。


 その事実に一番驚くのは神田自身だ。













 「いつの間に・・・」


 「気付いてなかったのね。」


 「・・・全く。」











 ハテナマークを多く頭に浮かべている神田が


 面白いのか、は笑い出した。









 「ハハハッ、可愛かったよ。」


 「か・・・!?その表現やめろ!」


 「まあまあ落ち着いて。

  素敵なプレゼントだったわ。ありがとうございます♪」


 「絶対楽しんでるだろ・・・」



 「いいから早く片付けて、料理食べに行きましょう?

  神田もお腹減ったでしょ。」


 「・・・このこと誰にも言うんじゃねェぞ。」


 「はいはい」











 どんな表情だろうと 愛は変わらない


 なんてことを口にするのは恥ずかしいので 心に秘めておいた




 Merry Xmas Dear.Kanda
























  End


















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 ▼作者後書き▼



 滑り込み神田クリスマス夢。

 神田の微笑む姿が見たいと思うのはいけませんかー!(叫(やめて)


 期間限定フリー夢となってますのでお持ち帰り自由です。

 その際は注意事項をよく読んでくださいねv




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